タイムラインがリトゥオで埋まった日があった。
肌の土台ごと作り直せる、次世代のスキンブースター。韓国でバズって、日本のクリニックにも入ってきた。フォロワーが「受けた」と書いていて、仕上がりの写真もきれいだった。
ただ、調べていくと「これはちゃんと理解してから決めたほうがいい」と思うことがいくつも出てきました。
効く理屈はちゃんとある。でも、原料のこと、トラブルの声、まだ分かっていないこと。気になる人が多いと思うので、調べられるだけ調べて、ここに参考になるよう書き留めておく。
私自身がどう決めたかは、別の記事に書きます。この記事は、リトゥオとは何かを判断するための材料を並べる回。
そもそもリトゥオって何なのか
リトゥオ(Re2o)は、日本ではブナジュ(BNAJU)という名前でも扱われている、注射するタイプのスキンブースター。
原料は hADM(ヒト無細胞真皮マトリックス)と呼ばれるもの。名前はいかついけど、中身はあとで噛み砕きます。
まず、肌の作りから。

肌の奥(真皮)には、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸といった成分が、網の目みたいに組み合わさって「土台」を作っている。布でいうと、繊維が織り重なった生地みたいなもの。この土台のことを ECM(細胞外マトリックス)と呼ぶ。歳とともにこの生地がへたって、ハリやキメが落ちていく。
リトゥオは、この土台そのものを、注射で肌に入れる施術。

従来の肌育注射、たとえばリジュランやジュベルックは、これとは仕組みが違う。あれは「自分の細胞よ、コラーゲンを作れ」とスイッチを押すタイプ。材料を渡すんじゃなくて、自分の工場を稼働させる。だから効果が出るかは、自分の細胞の元気さ次第なところがある。
リトゥオは、工場を動かすというより、作り直すための土台を直接運び込む。ここがいちばんの売りで、他の治療で手応えがなかった人にも、という言われ方をしている。
ただ「土台を運び込む」と言っても、ただ成分を足すだけじゃない。ここが面白いところなので、節を分けて書く。
どういう理屈で肌が変わるのか
リトゥオを「若い皮膚を移植する施術」だと思っている人がいるけど、それは誤解。入れるのは、生きた皮膚でも細胞でもない。
脱細胞化、という処理をしている。皮膚から細胞を全部抜いて、繊維でできた「足場」だけを残す。生地でいうと、糸の織り目だけを残して、それ以外を洗い流したような状態。リトゥオで肌に入るのは、この足場の部分。
で、この足場が何をするか。
ただの詰め物じゃなくて、自分の細胞を呼び込む「土台」になる。肌の中にこの足場が入ると、そこをめがけて自分の線維芽細胞(コラーゲンを作る細胞)が入り込んでくる。そして、その足場の上で、新しいコラーゲンを自分で作りはじめる。
たとえるなら、空き地に「ここに建てていいよ」という基礎と足場だけ用意してあげる感じ。建てるのは自分の細胞。だから効果は注射した翌日にパッと出るんじゃなくて、数週間から数か月かけて、肌が内側から作り直されていく。即効でふくらませるボリューム注射とは、狙っているものが違う。
理屈はこれでだいたい掴める。じゃあ本当に効くの、という話。
効くという根拠は、ある
ここは正直に書く。リトゥオには、ちゃんとした試験データがある。
査読のある医学誌(International Journal of Molecular Sciences, 2026年)に、Re2o の臨床試験が載っている。頬の肌のざらつきが気になる大人20人を対象に、顔の片側にリトゥオ、もう片側に普通のヒアルロン酸を入れて、20週間どう変わるかを比べたもの。同じ人の左右で比べているから、肌質や生活のばらつきが出にくい、わりとフェアな作り。
結果は、リトゥオを入れた側のほうが、肌の密度・弾力・シワの深さ・毛穴・水分などで、改善が大きかったと報告されている。動物実験のほうでも、入れた足場に細胞が入り込んで、その場で新しいコラーゲンができていく様子が確認されている。
論文はここで読める(International Journal of Molecular Sciences, 2026/臨床試験の登録情報)。
ひとつだけ前提を置いておくと、これは20人規模で、製品を出している側が関わっている試験。だから「これで全部証明された」とまでは言えない。でも、効くか効かないかで言えば、効く方向の根拠はちゃんとある。怪しい施術ではない。これは先に認めておく。
ここまでが「仕組み」と「効果」。ここから先が、私がいちばん引っかかったところ。
原料は、亡くなった人の皮膚
リトゥオの原料になる足場は、寄贈された皮膚から作られる。献体、つまり亡くなった方が提供した皮膚から、細胞を抜いて、繊維の構造だけを残したもの。これがさっきの hADM。
クリニックの説明を読むと、原料の管理はかなり厳しく書いてある。アメリカの組織バンクの基準(AATB)やFDA、国内の基準を満たした寄贈皮膚だけを使い、調達から加工、流通まで全部管理している、と。組織移植というのは医療の現場で実際に行われていることで、それ自体がおかしいわけではない。
それでも、ここで一回立ち止まる人はいると思う。コラーゲンを「自分で作らせる」治療なら、入るのは自分の力。でもリトゥオは、もとは他の人の体の一部だったものを、自分の顔に入れる。仕組みとして理解できても、気持ちのところで引っかかる。私がそうだった。
高齢の人の皮膚でも、意味があるのか
ここも気になった。寄贈された皮膚って、若い人のとは限らない。高齢で亡くなった方のものかもしれない。老けた皮膚を入れて若返るって、逆じゃないの、と。
調べたら、二つに分けて考える必要があった。
ひとつ。細胞の若さは関係ない。細胞は全部抜いてあるので、ドナーの老けた細胞が自分の顔に移るわけじゃない。「老化した細胞を入れてしまう」という心配は、ここは当たらない。入るのは足場だけ。
ふたつ。でも、足場そのものの年齢は関係する。これがややこしい。歳を取った皮膚は、繊維がちぎれたり、糖化(コゲのように繊維が硬く劣化する現象)が進んだり、保水成分が減ったりしている。細胞を抜いたあとの足場の質も、もとのドナーの年齢に左右される、というのは組織を扱う研究の世界では知られている。つまり、若い人の足場と高齢の人の足場が、まったく同じように働くとは言えない。
まとめると、高齢ドナー由来でも、足場としては機能しうる。繊維の構造が残っていれば、自分の細胞が入り込む場所にはなる。でも「若返り」と言い切るには、足場の質、つまりドナーの年齢が効いてくる。そして、Re2o がドナーの年齢に上限を設けているか、年齢で効果がどう変わるかは、公開されている情報からは確認できなかった。
効く根拠はある。仕組みも通っている。でも、肝心の足場の質を左右するドナー年齢が分からない。これは施術が悪いという話じゃなくて、判断するための材料がまだ足りない、という話。
いま、こういう声が出始めている
もうひとつ、調べていて見つけたのが、施術後のトラブルの声。
韓国の掲示板や X で、注射した跡に「結節」ができた、という投稿がいくつかあった。結節というのは、皮膚の下にできる小さなしこりのこと。触るとコリッとして、見た目にもポコッと盛り上がる。目の下にできて、でこぼこが気になって眠れない、と書いている人がいた。痒みやあざ、炎症が引かないという声もあった。
しこりへの対処として、生理食塩水を注射したり、炎症を抑える注射を打ったりしているらしいけど、「1か月で消えると言われたのに消えない」「除去の手術を調べたら高額だった」という後日談まで流れてきて、ここはひやっとした。
ただし、これは伝聞。出どころは個人の投稿で、本当かどうかも、その人がどんな条件で受けたのかも確認できない。だから「リトゥオは結節ができる施術です」と事実みたいに言い切るのは違う。新しい治療には、こういう声がまだ整理されないまま流れている、という段階の話。
仕組みから一つだけ言えるのは、ヒアルロン酸のしこりなら溶かす注射で対処できるけど、リトゥオはヒト組織でできた足場なので、同じようには溶かせない。残ったときにどうするのかは、まだ事例が溜まりきっていない。
遠いところに、もうひとつ
ここまでは「いま起きているかもしれない」近い話。最後に、もっと遠い話を一つだけ。プリオン病。
プリオンというのは、普通の加熱や消毒では壊れにくいタンパク質で、過去にヒト由来の組織や薬を介して感染が起きた歴史がある。ヒト組織由来のものというと、この名前が頭をよぎる人もいると思う。
ここは正確に書く。リトゥオを介したプリオン感染のリスクは、医学的には「理論上、極めて低い」とされている。あるドクターが X で解説していた内容でも、プリオン病などの感染リスクは理論上ごくわずかで、医学界の共通理解としては「ほぼなし」と考えていい、という説明だった。ゼロとは言えないが、ほぼない。これが今の到達点。
だから「プリオンが怖いからリトゥオは危険」と言うのは、正確じゃない。リスクが高いわけではない。
受けるなら、ここだけは確認する
最後に、もし受けるなら確認してほしいことを置いておく。
カウンセリングで、原料の出どころ(AATBやFDAの基準を満たしているか)、ダウンタイム、費用、そして結節などのトラブルが出たときにどう対処して、どれくらい費用がかかるのか。ここまで聞いてから決めてほしい。きれいな仕上がりの写真の裏側を、入れる前に全部見ておく。それだけで、判断の精度はかなり変わる。
効く根拠も、まだ分からないことも、両方ある施術。どっちも見たうえで選ぶのが、いちばん後悔しないと思う。
ちなみに私自身は、これだけ調べたうえで「今は受けない」と決めました。
その理由は、長くなるので別の記事に書いた。
