理由1:人体は異物を許さない(被膜形成のロジック)
私が糸リフトを拒否する最大の理由は、「異物を体に入れることへの生理的な拒否反応」と、それに伴う「被膜形成(ひまくけいせい)」のリスクです。
「コラーゲンが増える」の正体
クリニックの広告ではよく「糸の周りにコラーゲンが生成され、肌にハリが出る」と謳われています。これは嘘ではありませんが、正確ではありません。
体の仕組みから翻訳すると、これは「異物反応による防御システム」です。
- 侵入: 体内に「糸」という異物が入ってくる。
- 隔離: 体の免疫システムは、異物を排除できないと判断すると、コラーゲンの膜を作って異物を包み込み、周囲の組織から隔離しようとする。
- 結果: この「隔離するための壁」が、美容業界でいう「コラーゲン増生(ハリ)」の正体です。
つまり、増えているのは若々しい柔らかいコラーゲンではなく、「瘢痕組織(はんこんそしき=傷跡の固い組織)」に近いものです。

蓄積する「内部の傷跡」
「溶ける糸だから後に残らない」というのも、半分正解で半分間違いです。
糸の素材(PDOやPCL)自体は加水分解されて消えます。しかし、糸を包んでいた「コラーゲンの筒(被膜)」は、糸が消えた後も体内に残ることがあります。
何度も糸リフトを繰り返している人の皮下組織は、この瘢痕組織によって硬くなり、線維化(フィブローシス)が進んでいると言われています。
私は、一時のハリと引き換えに、自分の顔の内部を傷跡だらけにするリスクは負いたくないと考えました。
理由2:痛みのリスクと「気軽さ」のギャップ
「ランチタイムにできるくらい手軽」と言われますが、物理的にトゲ(コグ)のついた糸を皮下に通して肉を引っ張り上げる処置が、無侵襲なわけがありません。
神経に触れるリスク
顔には無数の神経が走っています。もし糸が神経に触れたり、近くを通ったりすれば、笑うたびにピキッとした痛みが走ったり、違和感が数ヶ月続くリスクがあります。
「我慢できるレベル」だとしても、日常生活に痛みというノイズを抱え続けるのは避けたいのです。
薄肌との致命的な相性
そして、私のスペック(薄肌)においては、以下のトラブルが起きる可能性が非常に高いです。
- 透け: 糸の青いラインが皮膚から透けて見える。
- 引きつれ(Dimple): 笑った時にえくぼのような不自然な凹みができる。
- ボコつき: 糸の通り道がミミズ腫れのように浮き出る。
皮膚が厚い人なら隠せるかもしれませんが、薄肌の私にとって糸リフトは「ハイリスク・ローリターン」な賭けでしかありません。
理由3:将来の「拡張性」を殺したくない
目先の修正のために応急処置を繰り返すと、将来、根本的な治療をしたい時に苦労することになります。
癒着が邪魔をする未来
私は将来、本当にたるみがどうしようもなくなったら、最終手段として「切開リフト」や「ポニーテールリフト」といった外科手術を受ける選択肢を持っています。
しかし、糸リフトを繰り返して内部が癒着(瘢痕化)していると、いざ切開手術をする時に「癒着が酷くて皮膚が剥がせない」あるいは「出血多量になる」「手術難易度が跳ね上がる」という事態になりかねません。
継ぎ接ぎだらけになる顔面
安易な糸リフトの繰り返しは、顔の内部構造を複雑にしてしまいます。
- プランA(糸リフト繰り返し): 内部に瘢痕を溜め込みながら、誤魔化し続ける。
- プランB(私の選択): 内部をクリーンな状態に保ち、限界が来たら外科手術で根本的に修正する。
私は、将来の執刀医に「綺麗な層ですね、手術しやすいです」と言われる状態を保っておきたいのです。
結論:私は「熱(RF)」と「外科(切開)」の間を選ばない
美容医療には「松・竹・梅」の段階がありますが、私はあえて真ん中の「竹(糸)」を選びません。
【私の選択】
- 軽度〜中等度(現在):
- RF(ボルニューマ)等の熱治療で引き締める。
- ボトックスで筋肉の暴走を止める。
- 重度(未来):
- 覚悟を決めて「切開リフト」や「ポニーテールリフト」で余った皮膚を物理的に切除する。
- 不採用:
- その間の「糸リフト」は、癒着リスク(将来への負債)とリターンが見合わないため採用しない。
これが、30代後半の私がたどり着いた結論です。
もちろん、糸リフトですばらしい結果を出している方もいますし、否定はしません。
ただ、「溶けるから元通りになる」という言葉だけを信じず、「体の中で何が起きるか(被膜形成)」まで理解した上で選択することが、後悔しない美容医療の第一歩だと思います。
